魅力ある学校図書館作りに必要なこととは~先生と司書の役割~(1/2)魅力ある学校図書館作りに必要なこととは~先生と司書の役割~(1/2)

全国SLA学校図書館スーパーバイザーとして、多くの学校図書館の支援を行っている藤田先生。今回は藤田先生に、本来「学習の場」である学校図書館で、子どもたちがいきいきと調べ学習に取り組むためには司書はどういう資料や本を選んだらよいか、また、調べ学習を行う際、先生方にもっと図書館を活用してもらうにはどうしたらよいか、学校司書の役割と学校図書館の上手な活用法についてお話をうかがいました。

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絵:すがわらけいこ

藤田利江(ふじた としえ)

全国SLA学校図書館スーパーバイザー。元・小学校教諭。平成15年より司書教諭を兼任。この年、司書教諭の活動記録で、学校図書館賞奨励賞を受賞。退職後の10年間、荒川区や大和市などの教育委員会に所属。その他の地域も含めた多くの学校図書館の支援に関わる。また、神奈川県の座間市立図書館で始めた「調べる学習にチャレンジ」という講座を全国の学校や公共図書館で開催し、その数は500回を超えている。平成27年度「図書館を使った調べるコンクール、調べる学習指導・支援部門」にて優秀賞を受賞。おもな著書に「調べる力がぐんぐん身につく 藤田式「調べる学習」指導法 小学校編」などがある。

① 学習に役立つ学校図書館って?

学校図書館は「学習センター」「情報センター」です!

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学校図書館というと「静かに読書をする場」という認識が定着していますが、本来、学校図書館には、子どもたちの主体的な学習を支える「学習センター」や「情報センター」としての機能も求められています。

「学び」を支える学校図書館へ

そして今、子どもたちの「学び」を支えるために、学校図書館をもっと活用しよう、「学習の場」に変えようという動きが出てきています。
最近では「調べ学習」が定着したことで、実際に図書館で授業を行う機会も増えてきました。
ところが「世界文学全集」などの読み物は充実していても、「調べ学習」で活用できる本の種類はまだまだ数少ないという学校が多いのが現状です。

年鑑は最新のものをそろえたい

私が学校図書館に必ずそろえておいてほしいと思うのは、子ども用の学習年鑑と総合百科事典、各種図鑑類です。とくに学習年鑑は最新のものをそろえておきたいものです。
最近は東京オリンピックがらみで、どこの学校でもよく「国調べ」をやりますが、その際、アメリカ合衆国なら簡単に調べられるでしょう。ですが、アフリカの小国などあまりなじみのない国の資料は、なかなか見つかりません。その点、年鑑には、さまざまな国の情報が載っています。

次に調べ学習の本をそろえる

また、教科書の内容(単元)に沿ったテーマの調べ学習のための本も必要です。
低学年の場合、「乗り物」についての単元が国語の教科書に出てくるので、乗り物についてやさしく書かれた本がほしいですね。図鑑だけでなく、乗り物の仕組みや働き、その乗り物に関連する職業についてもわかるような調べ学習の本があれば、先生方も授業の参考にしやすいでしょう。

関連した本をそろえて、より深い学習につなげる

また、光村図書の小学校4年生の「国語」に「ウナギの謎を追って」というノンフィクション読み物が載っていますが、これで調べ学習をしたいという先生が多くいらっしゃいます。そのとき、『うなぎ1億年の謎』(学研プラス刊)など、その内容をさらに深く学ぶことができる関連本があると、発展学習に役立ちます。


② 調べ学習にもっと学校図書館を利用してもらうには…?

調べ学習の授業は誰がする?

まだ若く経験の少ない先生の場合、調べ学習をするにはどの本を使えばいいのか、わからないかもしれません。そのため、図書館を利用して学習するときは、本にくわしい学校司書に本の紹介や学習方法などを説明してもらったほうがよいと考える先生もいるようです。

先生と司書の二人三脚で授業を深める

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ですが私は、教育課程の中に位置づけられた「授業」は、やはり先生がやるべきだと考えます。司書が授業に関わるなら、先生と共通理解を持ったうえで、お互いに役割分担を決めることが大事。先生が行う授業で、司書の知識を最大限活用してもらうという形が一番望ましいのではないでしょうか。

調べ学習のテーマを考え、本を選び、先生に提案する

先ほど例にあげた教科書の「ウナギの謎を追って」は、ウナギにはまだ解明されていない謎の部分があり、その謎を追って長年研究を続けている、というノンフィクションです。
先生から「これをもとに調べ学習をしたい」と頼まれたとき、学校司書としては図鑑や『うなぎ1億年の謎』をそろえるだけでなく、「ウナギ以外にもまだ解明されていないものはたくさんある。それらの中で子どもが興味を持ちそうなことはなんだろう?」と、そこまで考えを広げたいものです。そして、恐竜、宇宙、他の生物などの本も準備するとよいでしょう。
単元にこめられた本当のテーマを見つけて、同じような傾向の本を司書が発掘し、先生に提案できるようになれば理想的です。

指導計画書や教科書に目を通したい

学校司書の方にぜひやっていただきたいのは、全学年の指導計画書や教科書をチェックすること。「○年生の国語では△月にこういう勉強をするから、このあたりの本を使うかな?」と事前に察知して準備しておくと、先生からの問い合わせにもすぐに対応できます。


③ 先生や子どもに図書館に来てもらうには…?

図書館の活用法を先生たちに伝える

学校司書なら誰でも、もっと先生に図書館に来てほしい、授業で使ってほしいと思っているはずです。そのためには、図書館の本や資料を活用すれば教科書だけの授業よりもっと深く幅広い学習ができることを、先生方にわかってもらうことが大切です。

先生のニーズにあわせて本をすすめる

新しい本が入ってきたら、それをいかす工夫をしましょう。まずは先生たちに広く告知し、「あ、こんな本が入ってきたんだな」と認識してもらうことが大切です。職員室の目につくところに日替わりで本を並べておいたり、「この本は先生の学年で役に立ちそうですよ」と、先生一人ひとりのニーズにあわせて直接アプローチするのもいいでしょう。

子どもたちにはさまざまな仕掛けを

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子どもたちには図書館にさまざまな展示や仕掛けをして、興味を引くようにすると良いでしょう。ある学校司書の方は、「昭和のくらし」というような調べ学習の本と一緒に、ダイヤル式の黒電話を図書館に持ち込みました。
今の子どもは黒電話を使ったことがないから、ダイヤルの穴に指を入れて途方に暮れてしまう(笑)。司書が使い方を教えると、今度は我も我もとダイヤルを回して大はしゃぎ。「昔のものはおもしろいなあ、本のほうも読んでみようかなあ」という気になって、自然と本に手が伸びるというわけです。

難しい仕掛けはいらない

とれたてのダイコンを展示した学校司書もいます。最近は葉っぱのついているダイコンを見たことのない子もいるし、そもそもダイコンが「根」だということを知らない子もいるくらいです。
実物を置いて、子どもに見せて触らせて、その横に「野菜」関連の図鑑や調べ学習の本を置いておく。そういうアイデアと共に本を提供し、調べ学習をするための糸口を与えるのも、司書の仕事だと思います。

④調べ学習の本を選書するコツは…?